QT延長はどれくらい延長したら危ない?
失神などの症状を伴う場合には、QT延長は危険ですが、健康診断の時に、いつもQT延長している場合にも、まれにQT間隔が見た目でわかるくらい延長している人がいます。
QT延長症候群の患者では、実際には、約1/2では症状なく、何らかで心電図をたまたま記録した際に発見されることが多いらしい。
どれくらい延長していれば危ないのでしょうか。
一般に、補正QT(QTc)は440 msecまでなら正常。それ以上はQT延長。
* QTcのcはcorrected(補正)の意味
いくつかの補正式があるが、Bazettの式を成人では用いる。心拍数が高いと過剰に補正(過剰に延長)してしまうため、心拍数が多い小児では、Fridericiaの式を用いて補正することが多い。
日本循環器学会のガイドライン(QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン2012年改訂版)でも
先天性QT延長症候群では
男女に関係なく550 msec以上であれば、TdPの危険が高まり、600 msec以上であればさらに高くなる
QT延長をきたす二次的な原因(電解質異常など)がなく、安静時12誘導心電図で補正QT(QTc)間隔 >480 msec(思春期前)、または>500 msec(成人)の無症候寒邪では遺伝子診断はクラスIの適応である
TdPによる失神および心停止の事故発生のリスクを評価する(リスク層別化)。QT延長が高度な例(QTc間隔 >500 msec)はリスクが高い。
二次性QT延長症候群では
QTc間隔が550 msec(または500 msec)以上になるとTdPは発現しやすいとされる
と記載されています。
閾値があるというわけではないのでしょうが、QTcが500 msec以上なら症状がなくても、原因がないか評価した方がいい目安かもしれません。
Gap現象
= Gap phenomenon、supernormal conduction、ギャップ現象
心房期外収縮は、blocked APCの形をとることもあれば、変行伝導の形をとることもある。一般的に、早期に心房期外収縮が起これば心室の興奮はブロックされるはずですが、それが当てはまらないことがありました。
調べてみると、gap現象でした。
機序はあれこれあるようですが、深追いして考えず、こういった現象もあるという程度でいいのかもしれません。
■Gap現象とは
通常は、心房期外収縮が生じると、心室に伝導されるときとブロックされることがある(blocked APC)。一般に、RP’間隔(先行するR波とその後の期外収縮のP’波の間隔)が、短ければ短いほど心室への伝導はブロックされる。
gap現象は、早期刺激の連結期(RP’間隔)が短くなると、伝導がブロックされるが、さらに連結期が短くなると、伝導が回復する現象。
Type I
Type II
■分類
Type I → 電導遅延が房室結節で生じるとき
Type II → 電導遅延が脚で生じるとき
■gap現象がなぜ起こるか
遠位部より近位部の不応期が長いことや、遠位部が不応期を脱するのに十分な電導遅延が近位部に生じることが必要(CCUレジデントマニュアル第1版 p427)。
Type Iでは、心房期外収縮の伝導が房室結節で遅延する結果、その遠位にあるHis-Purkinje系が不応期を脱している場合に生じる。
Type IIでは、心房期外収縮の伝導がHis-Purkinje系の近位で遅延する結果、その遠位側に位置する脚の不応期が不応期を脱している場合に生じる。
自己紹介
■自己紹介
昭和生まれの40代医師です。
これまで中小病院で働くことが多く、今は中規模の病院で一般内科の勤務医をしています。
どこの病院でも使う普通の心電図ですが、されど心電図です。その限界を認めつつ、もっと知りたいと思っています。地域医療に携わっていても、世界に通じたいと思っています。
その他は、モノとお金の話が好きです。
■はじめに
普段の診療で普通につかう心電図検査。
心電図は波形をみて、心電図の判定や解釈に迷ったり、どうしてそうなるかわからない波形を見かけることがあります。
わからないときにはわからないままにせず調べようと思います。
そして、次に同じ波形をみたときに、より分かるようになりたい。
意外と昔に知られていることが最近の教科書には掲載されていません。
一般の心電図の教科書には、細かいことを載せるとかえって全体が見えないため省かれるのかもしれません。
普通の心電図検査で迷ったり、知らなかったものをすこし調べてここに記載しておきたいと思います。
また、心電図とともに、モノやお金にについて考えていきたいと思います。